Ameba救済【お題H:モルヒネ】 Morpheus

会いたくて会いたくて会えなかった。だから夢を見た。それを望んだ。
あなたが俺に会いに来て愛の言葉を囁いてくれることを。

白い部屋四角いベッドの上静かに過ぎるだけの時は。
俺を確実に蝕んでいく。

病気発覚から、入退院を繰り返す日々。青春を奪われ、嘆き、苦しみ、ふさいでいく俺の。
唯一の光となったのは、あの人の存在だった。
慰問として病院にくるダンサー。その容姿だけで誰もがため息をつく。
ダンスでさらに歓声を増やし、人柄で彼の虜。
噂には聞いていた。見に行くつもりもなかった。母親がすっかりファンになっていた。
写真を見せてもらって、興味がわいた。とても、素敵な笑顔だったから。

言うなれば神様のような。

具合が悪くても、彼の慰問があると聞けば中庭に車椅子を押してもらって見に行った。
彼はいつも公演の後、見に来てくれた客ひとりひとりと挨拶を交わす。
だから、見舞いに来たわけじゃない若い女の子が紛れ込んで、彼に告白したり。
そんなやりとりを、苦々しい気持ちで見つめていた。
俺は彼が挨拶に来てくれる前に、部屋に帰っていたのだけれど。
ある日、個室のドアをノックする音がして。
断りようもなく部屋に入ってきた声を背中で聞いて、驚いた。
さっきまでダンスを踊っていた、ユノその人だったから。

「いつも、見に来てくださっている、シムさん・・・ですよね?」
恥ずかしくて、振り向くことさえできない。ユノは顔が見える位置まで回り込んで。
「よかった。看護師さんに聞いたんです。シムさんの部屋はここだって」
「何の用ですか」
「あ、いや・・・、失礼しました。お疲れのところ、部屋まで押しかけて」
「わかってるならさっさと用件をおっしゃってください」
うれしいくせに、優しくなんかできなかった。どうせ寝たきりの俺を憐れんで部屋まで来たにきまってる。
「いえ、ただ・・・お礼を言いたかったんです。いつも見に来てくださってありがとうございます」
深々と頭を下げた。・・・驚いた。思った以上に、誠実な人間で。
「本当は・・・ここでお会いしないほうがいいんですよね。いつかチャンミンさんに、ステージで踊る僕を見ていただきたいと思っています」

早く良くなってくださいね。言って部屋を出ていくユノを。
引き止めたくてたまらなくて、でもそんなことさえ、できず。
それからも何度か部屋まで会いに来てくれた。二度目は、ちゃんと返事を、して。
三度目は、見つめあって話して。
四度目は、名前を呼び捨てにしたと、思う。
五度目は。
・・・会えなかった。

病状が悪化して、ICUで。
母さんがユノからのメッセージを壁越しに聞かせてくれた。
チャンミン、会いたいよ、待ってるよ、って。
痛みに喘ぐ俺は。
モルヒネに溺れて。

なんとか体調が安定し、退院した。
会えるはずも、なく。
会う約束もできなかった。教えられた連絡先は、すでにつながらなくなっていて。

1年後にまた、入院。
風の噂に、ユノはどこかの事務所から、デビューする予定だと聞いた。
ああ、だから。
切り捨てられたんだと、思った。

痛い、苦しい。・・・会いたい。
痛い、苦しい。・・・ユノに会えるなら、夢でもいい。
夢でいいから。

願いが叶ったのか、俺が入院して2週間後、容体が安定したころに。
ユノが、会いに来てくれた。ふたりきりで話した。
ずっと会いたかったと、携帯を壊してしまい、連絡が取れなくなったと聞いた。
病院関係者は、やはり職務上俺の連絡先を教えるわけにはいかなくて。
再入院した俺のことを、仲のいい看護師がこっそり教えてくれたのだという。
あの後もユノは何度か慰問に来ていたのだ。

「会いたかったよ、ずっと会いたかった。できれば外で会いたかったな」
「何言ってるんだ、またすぐ退院できるようになる」
「何度も入退院を繰り返してるんだ。進行性の病気だから・・・よくなりようがない」
「・・・チャンミン・・・」

ひとつだけ、お願いがある。いやなら、黙って帰ってくれ。どうせもうじき死ぬんだ。
会えなくなっても、後悔はしないから。
・・・好きだ、ユノ。友達としてじゃない。恋愛対象としてだ。
同情は要らない。5秒、目を閉じる。友達でしかないなら、その間に黙って帰ってくれ。
同じ気持ちなら、目を開けた時、気持ちを、聞かせてくれないか。

目を閉じた。靴音が聞こえた。ドアノブを回す音。・・・帰った。
わかってたはず。涙が一筋、零れ落ちた。まだ聞こえる靴音。
5秒たった。目を、開けると。

ユノが、俺をのぞき込んで笑っていた。
「・・・帰った、んじゃ・・・」
ユノはドアのほうを見ていたずらっぽく笑う。
「カギ、閉めてきた。誰かに見られちゃ・・・困るだろ?」

心をあげる。俺の心をあげる。
受け取って欲しいんだ。チャンミン、好きだよ。

驚く俺に、ユノは微笑んで。
優しいキスを、してくれた。
俺の涙を、きれいな指ですくって。
何度も、何度も、口を開けられ舌を絡めあう激しいキスをして。

「本当はあの日、告白、したかったんだ。誕生日だって聞いてたから」
その言葉に震えた。なんてもったいないことを。
「・・・いつ?」
「初めて部屋に行った日だよ。すごく冷たい態度されたから、言えなかった」
一目惚れ、だったんだあ。懐かしそうに言う、ユノを。
信じられない思いで見つめていた。

その日から、時間が取れるたびに見舞いに来てくれるユノと。
重ねた蜜月。キスしか、できなかったけど。
時々は外を散歩したり、ユノの車に乗せてもらってドライブしたり。
楽しい時間を過ごしてた。

だけどまた、再発。別の病気まで併発して。
根本的な治療方法は移植しかないと。
俺の病気が進行する一方、ユノはどんどん夢に近づいていく。
デビューに向け忙しくなる日々の中で、当然、会えない時間が増えていき。
俺はもう。
足手まといになるなら、と。

連絡を取ることすら、やめてしまった。

いつかその名前が、テレビのニュースで聞ける日が来るかもしれない。
ユノから聞いていたグループ名のアイドルがデビューしたと、人づてに聞いた。
俺は設備の整った病院に転院し、ユノと俺との接点は。
もはや、なくなって。

何度も夢を見た白い部屋。いつか俺は。
一度も経験のなかった愛の交歓を、ユノとした。
夢を、見た。

その夢を見た翌日、ドナーが決まったと連絡があった。
移植を受けてから約3か月後、退院した。
一番にしたかったのは、恋愛。次に勉強。親孝行。友達との旅行。
なによりもあなたに、会いたかった。

会いたくてたまらなくて、前の病院へ行って。
ユノがまた慰問に来ていないか、聞いた。
ユノを知る看護師や医師たちはみんな口を閉ざす。あんなに、目を輝かせて。
ユノのことを語った、人たちが。

母さんも、最近のユノのことは知らなかった。
アイドルとしてデビューしたとはいえ、流行に敏感な若者でなければ。
そこまで追うこともない。

帰り際、出会った女の子に。
ユノのことを聞いてみた。知らないかもしれないと思いながら。
「この病院にダンスを見せに来ていたお兄さん、知らない?」
「1回だけ、見たことがあるわ。お兄ちゃんのお見舞いに来たとき」
「今、彼がどうしてるか、知ってる?」
俺の言葉を遮るように、背後から近づく、車椅子。

ナクナッタッテキイタヨ。
モウ1ネンクライタツカナ。

そこにいたのは。
あの頃、ユノに告白していた、入院患者ではなかった女の子。
「君・・・は」
さっき、お兄ちゃんって言わなかったか? 彼女が?
どう見ても、色の白い、線の細い・・・女の子。
「あんたも好きだったんだろ? ユノヒョンのこと」

デビューしてすぐの活動中に、交通事故で。
亡くなったんだ、あの人。
ここに運ばれてさ、ドナー登録してたから、あの人の臓器は、ほぼ全部。
あっちこっちに、プレゼントされたよ。俺も欲しかったなあ。あの人の臓器。なんでもいいから。
俺の体の中で、生きていて欲しかった。

ドクンと。
心臓がはねた。俺のドナーは。
まだ若い男性だったはずだ。事故で、亡くなったと。

心臓はさ、特例で。
大切な人が移植以外に治らない病気で心臓を待ってるから、その人にって託したはずだよ。
必ずしも希望通りに行ったかは、わからないけど。
まさか本当に、自分が死んで心臓をあげることになるとは、思わなかっただろうけどね。

気づけば涙が頬を伝って。
俺はその場に頽れて泣いた。
この心臓があなたのものでもそうでなくても。
誰かの命のおかげで、生きている。

心をあげる。あなたはそう言った。それは、好きという気持ちをくれるということだったはずだ。
・・・だけど。
あなたの心臓は、本当に誰かの元へ、命をあげたんだね。

もう俺には必要のないモルヒネが欲しい。
この胸の痛みを、夢のように忘れさせてくれるなら。
無理なこと。この胸の痛みは。
モルヒネじゃ救えない。

それならばモルペウス、お願いだ。
その力で、あの人を形作って。








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モルヒネ(ホミン) 葉月さまに捧げます

Morpheus(モルペウス)とは夢の神、モルヒネの語源となったギリシア神話の神様です。
なんだろ、なんかいまいち消化できなかったんだけど
この方向で行きたくてこうしてしまいました。
今後いい感じでただの麻薬っぽく作れたらいいんですけどね・・・!
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Morpheus

泣きました。

この手のお話はやばいです。

引きずります・・・・

きおさんって、凄い人だと思っていたけど、マジ凄いです。

どこまでもついて行きます!!
所属:Bigeast/ビギシャル

mizutama

Author:mizutama
2011/10~「Why?」から「B.U.T.」で東方神起に陥落。ユノペン、ホミン派(リバOK)。
韓流、BL一切興味なしだったのがホミンの目に余るリア充ぶりにBL初挑戦。
【注意事項】
・某有名人をイメージした作品ですが、あくまでも妄想でありご本人+周辺人物とは一切関係ありません。
・使用されている画像等の著作権は著作権元にあります。
・作品は個人的なものなので転載・盗用しないでください。

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